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今日の自分が、見知らぬ誰かの人生を彩るかもしれない… The Sun Is Also A Star (Nicola Yoon)

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今回は、本の感想を語る前に、私が本格的に洋書を読むきっかけとなったある男性との出会いについてお話ししたいと思います。正確には「出会った」のではなく、ただ「見かけた」だけの人です。それまでも英語学習の一環として洋書を読んではいましたが、その出来事を境に、私の洋書の読み方がガラリと変わったのです。

どこかのタイミングでこのブログに書きたいとずっと思っていたことなのですが、 Nicola YoonのYA小説「The Sun Is Also A Star」を読んだことで、ようやくその機会がやってきました。大した話ではないのですが、ご興味のある方は、しばしお付き合いいただければ幸いです…。


数年前にニューヨークを訪れた時のことです。帰宅ラッシュで混雑した地下鉄の車内で、その男性はペーパーバックを読んでいました。顔立ちから判断して、おそらく中南米系の移民でしょうか。彼の着ているチェックのシャツとチノパンはくたびれていて、泥まみれのスニーカーのつま先には穴が開いていました。その佇まいからは、ニューヨークで暮らす苦労がうかがえます。

しかし、脇目もふらずに本を読みふける彼は、私の目にはとても幸せそうに見えました。本に没頭している間だけは、日々の煩わしいことは全て忘れて空想の世界にひたることができる…そんな喜びで満たされているかような彼の姿に、私は憧れにも似た思いを抱きました。私もこの人みたいに生きよう…そんな思いにかられたのです。

それ以来、英語学習の延長として洋書を読むのをやめ、自分の楽しみのための読書に切り替えました。英語力のレベルは気にせず、そのときどきで自分が読みたいと思った本を気の赴くままに読むことにしたのです。勉強のためにという気負いや焦りを捨てたことで、洋書を読むことが純粋な喜びに変わりました。

本の買いすぎでお財布の中は常に空っぽですが、洋書を読んでいる時は、常に豊かな気持ちで満たされています(どうしても読めない本に対してキーッとなることもありますが。笑)。電車の中で本を開く時間は特に幸せで、ときどき自分が目に見えないバリアに守られているのを感じます。そんな時、ニューヨークで出会ったあの男性の記憶がいつも心に蘇ります。

あの男性は、極東で暮らす見知らぬ女に自分が影響を与えたとは夢にも思っていないでしょう。けれども私は、おそらく彼のことをこの先もずっと忘れないと思います。今でもたまに、彼のニューヨークでの暮らしぶりをときどき想像したりしています。

彼は今日も、地下鉄の中で本を開いているだろうか。

奥さんや子供はいるのだろうか。

仕事は何をしているのだろうか。

職場で理不尽な思いをしていないだろうか。

定期的に移民局に行かされて、犯罪歴についてしつこく聞かれたりしているのだろうか。

今でも彼はニューヨークに住んでいるのだろうか…。


そんなことをひっそりと…ね。



「The Sun Is Also A Star」は、移民の街ニューヨークが舞台の切ない恋物語です。母国への強制送還を明日に控えたジャマイカ移民の女性と、詩人になる夢をくすぶらせながら親の意向で名門大学への進学を目指す韓国系アメリカ人のダニエル。偶然に導かれて出会った2人の運命的な1日が描かれています。

2人が運命の赤い糸を懸命にたぐり寄せようとする裏で、彼らを取り巻くさまざまな人たちの思いが交錯します。2人との関係が深い人々(それぞれの家族)もいれば、その場限りの関係の人もいます(地下鉄の車掌、移民局の職員など)。夜空に無数の星がまたたくように、彼らにもそれぞれの人間模様があり、何らかの形で互いに影響を与え合いながら、世界を形作っているのです。

運命の出会いというものは、あえて探しに行かなくても、自分の周りのあちこちに転がっているものなのだ…そう信じたくなる物語です。小説になるようなドラマチックな出来事はそう起こらないとしても、今日を生きる自分の存在が、通りすがりの誰かに何らかの影響を及ぼすかもしれないのです。ニューヨークの地下鉄で本を読んでいた男性が、私をさらなる本まみれの人生に導いてくれたように。

あの時、私が地下鉄に乗るのを1本遅らせていたら、あの男性に出会うことはなかったでしょう。あの人に出会わなければ、洋書に散財することなく今頃は大金持ちになっていたかもしれませんが…。まあねぇ…それは、また別の話ということで。






※映画版です。主人公の2人とNYの街並みが魅力的。でも私は原作の方が好みかな…。



Nicola Yoonのもう1冊の著書「Everything Everything」は、レビューはしていませんがこちらの記事で少しだけ触れています。



*** いつもお読みいただきありがとうございます ***

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Commented by Michiko at 2020-01-20 12:51 x
Hiroko さん


Hirokoさんがブログに書いていただき、
私も、そのNYの地下鉄の男性に会ったような気になりました。
そして、単純に洋書を楽しむべきなんだと気づかせてもらいました。

そうなんですよね…洋書となると、どうしても構えてしまって、語彙を理解しないといけないとか、増やさなきゃいけないとか思って、自分の知識不足にがっかりして読書が止まってしまいます。

私も、その男性のその時の様子を思い出すようにして、
洋書を楽しみます。

その男性の “今” が、ほんと気になります。

Hirokoさん以外にも、いろいろな方に影響を与えているかもしれませんね。現に、私がそうですし。

う~ん。となると、
私自身の普段の行動も…気を付けなきゃ!


Commented by book-of-dreams at 2020-01-20 22:47
> Michikoさん

外国語の勉強に終わりはなく
習慣化して続けていないと、あっという間に忘れてしまいます。
ずっと続けていくためには、やはり楽しくないと…ですよね。

>私自身の普段の行動も…気を付けなきゃ!

そうそう、そうなんですよー!
私も電車の中でいつも本を読んでいますが
ニヤニヤしたり、ウルウルしたり、顔を真っ赤にしたりで
他人の目には「ただの怪しい人」にしか映っていないかも…笑
by book-of-dreams | 2020-01-19 17:34 | YA(ヤングアダルト) | Comments(2)

趣味で洋書を読んでいます。表紙に一目惚れして衝動買いした洋書のレビュー、本に対する偏愛、英語の勉強などについて綴ります。


by Hiroko