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「ドロシーの物語」が時代を超えて愛される理由 Finding Dorothy (Elizabeth Letts)

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「オズの魔法使い」の作者ライマン・フランク・ボームとその妻が共に歩んだ人生の道のりを軸に、オズの物語の誕生秘話、そして大ヒット映画の舞台裏を綴ったヒストリカル・フィクションです。

日記や手紙などの膨大な資料や学術研究などを基に、発展途上のアメリカで夢を追い続けた人々の姿を描いた大河小説。新年の読書初めにふさわしい感動作でした。


[あらすじ]
1938年のハリウッド。L・フランク・ボームの妻モードは、新作映画「オズの魔法使い」の撮影現場を訪れます。原作者である夫はすでに他界。夫が作品に込めた意図がねじ曲げられてしまうことを危惧するモードは、映画スタジオの重鎮との直談判を試みますが、まともに取り合ってもらえません。映画製作にあたり、たとえ原作者の遺族であっても口を出すことは許されない状況でした。

そんな中でモードは、主人公の少女ドロシーを演じるジュディ・ガーランドが撮影中に不当な扱いを受けているのを目撃します。ジュディの配役に疑問を抱いていたモードも、様々な重圧のもとでドロシーを演じるジュディを何とかして救いたいと思うようになります。収益のためなら手段を選ばない映画スタジオからオズの物語を守ることは、
モードと夫フランクの夢の象徴である「ドロシー」を守ることでもあったのです…。


「オズの魔法使い」が時代を超えて多くの人の心をとらえる理由が、この小説を読んであらためてわかりました。L・フランク・ボームがオズの物語で描いたのは、自身の人生そのもの。妻のモードと共に乗り越えた苦難の日々を愉快な冒険物語として紡ぎあげ、目の前にある困難から逃げずに前進し続けることの大切さを我々に教えてくれていたのですね。

努力の結果として手に入れたものが当初の願いとは違っていたとしても、それが次なる道への思いがけない扉を開いてくれる…。フランクとモードが歩んだ「黄色いレンガの道」には、そんな人生のエッセンスがたくさん詰まっていました。

この小説で描かれるモードとジュディ・ガーランドの触れ合いについては、どこまでが実際の話なのかは想像するしかありませんが、読者としてはこの逸話が本当であってほしいなと思います。この映画でスターとなったジュディ・ガーランドがその後にたどった運命を思うと本当に悲しいのですが(彼女の悲劇性もまた「オズ」が伝説となった理由の一つですよね…。残念なことではありますが)、せめて、この小説の中でジュディがモードと過ごした束の間の楽しいひとときが真実であったことを願わずにはいられません。

なお、巷に流れるジュディ・ガーランドのスキャンダラスな過去の一部については、悪意のある伝記作家やジュディを良く思わなかった人物による捏造の可能性が指摘され、現在ではその信憑性が疑問視されています。この小説でも、ジュディを取り巻くハリウッドの闇に触れられてはいるものの、観客に夢と感動を与えてくれたジュディへの敬意に満ちた描写がなされています。


今回の読書もたくさんの気づきと涙で満足された、非常に充実したものになりました。自分のヒストリカル・フィクション愛にさらに磨きがかかった気がします…。

以前このブログでご紹介したフィオナ・デイヴィスの「The Address」(レビューはこちら>>)の舞台となっていたのは、1800年代末期のニューヨーク。特権階級の金ピカな暮らしぶりが印象的に描かれていました。一方、「Finding Dorothy」で描かれているのは、同じ時代でもアメリカ中西部で貧しい生活を強いられていた労働者階級の人々。ひとたび災害が起きれば街が丸ごと消えてしまうような状況で、人々は安住の地を求めてさまよい続けていたのです。この2つの物語を比較するだけでも、「アメリカ」を一括りで語ることはできないことが良くわかるし、何事も大きな主語で語ってはならないということをあらためて認識した次第。

世界史の教科書からは何一つ学べなかった私も、丁寧に練られた海外小説を媒体にすれば、当時の人々の暮らしぶりに思いを馳せることができます。フィクションの力は本当に偉大。この楽しみをもう少し早くに味わえていれば私の人生も大きく違ったのかもしれませんが、今のままでも十分幸せだからまあいいか。エメラルドの都に向かうドロシーのごとく、自分を待ち受ける運命をすべて受け入れ、流れのままに生きていこう:->



※Kindle版はちょっと嬉しい500円台。
オーディオブックもおすすめ。厳しい時代を生きた女性たちの意志の強さが手に取るように伝わってきます。


※映画版がプライム特典で観られます。ただし画質が悪いので、気になる方はレンタル版で。


「オズの魔法使い」の原作本は、映画版よりもさらに優しさがあふれています。声に出して何度も読みたい英語。






*** いつもお読みいただきありがとうございます ***

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Commented by Michiko at 2020-01-16 19:44 x
Hiroko さん

私も”オズの魔法使い”が大好きなんです!!
だから、取り上げてくださってとても嬉しいです!

https://www.amazon.co.jp/gp/product/0143106635/ref=ppx_yo_dt_b_asin_title_o00_s00?ie=UTF8&psc=1

↑のジャケットが可愛いくて、注文をしたところです。

小学生の頃、テレビで”オズの魔法使い”をしていました。
赤と青のセロハンの眼鏡で見ると、飛び出して見える…という、
当時では画期的な番組で、毎週楽しみにしていました。
未知で夢のある世界に浸っていられました。

私もDorothyをFindingする為に、
kindleをポチッとしました!

Commented by book-of-dreams at 2020-01-16 21:21
> Michikoさん

こんにちは!
教えて下さったオズ本、めっちゃ可愛いですね🎵
カラフルで、手作り感に溢れてて…
しかも続編まで入っているんですね!
欲しくなっちゃいました(つД`)

テレビドラマの「オズ」は残念ながら見たことがありません…。
何かの雑誌に赤と青のセロハンの眼鏡が
付録でついてきたような記憶が…。
このドラマ、見てみたいなあ〜。

既存のテレビ局のいくつかを無くして、その代わりに
昔の名作ドラマや映画を流し続けるチャンネルができないかなぁと
常々思っている今日この頃です…。
(権利問題などいろいろあるとは思いますが)
Commented by Michiko at 2020-01-17 10:29 x
Hirokoさん

赤と青のセロハンご存知ですか??
嬉しいなぁ。
すぐ破れてしまって、親に作ってもらったような記憶もあります。

ジャケット、かわいいでしょ。
以前のこともあるので、見たままのジャケットが届くかどうか不安ですが…。


Commented by book-of-dreams at 2020-01-17 23:54
> Michikoさん

赤と青のメガネ、使った記憶はないのですが…。
実際に、画像が飛び出して見えたのでしょうか?
見えるような「気がする」だけでも楽しめたのかもしれませんね。

洋書は手元に届くまでホント不安ですよね…。
Michikoさんの注文通りのものが届くことを祈っています。

ウチにも、デザインが違うせいで読む気を無くしてしまった本が何冊も…w
by book-of-dreams | 2020-01-11 14:20 | 歴史小説 | Comments(4)

趣味で洋書を読んでいます。表紙に一目惚れして衝動買いした洋書のレビュー、本に対する偏愛、英語の勉強などについて綴ります。


by Hiroko