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生きる者たちの攻略法のないゲーム A Game for the Living (Patricia Highsmith)

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英国のVirago Modern Classicsという女性作家専門レーベルから出版されている作品は、どれもカバーデザインがとってもオシャレ。ジャケ買い至上主義者の私としては、片っ端から全部揃えて積みたくなって…じゃなかった、読みたくなってしまいます。前回ご紹介したDaphne du Maurierの「Rebecca」もこちらのレーベル。あのステキな表紙のペーパーバックに出会わなければ、読む機会がないまま一生を終えていたかもしれません。


そんなVirago Modern Classicsに、デュ・モーリアの作品と同様にいつか読破したいと思っていた作家、パトリシア・ハイスミスの作品が勢揃いしています。これがまた、表紙のデザインがどれもかっこいいんだな…。ある日いつものようにAmazonを探索していたところ、「A Game for the Living」のペーパーバックが新品で290円という嬉しいお値段になっていたので、超高速でお買い上げ。(残念ながら現在はちょっと上がってしまったようですが、それでも500円台ですよ。Kindle版はさらにお手頃価格です Amazon最新価格はこちら>>

ハイスミスの作品で私がこれまでに読んだことがあるのは「Carol」のみ、あとは映画「リプリー」を観たぐらいです(私の母親は「太陽がいっぱい」の大ファンだったとのこと)。そのどちらも、繊細かつ鋭い心理描写が印象的でしたが、「A Game for the Living」は一体どんな作品なのでしょう。美しい表紙の隅には「Gone Girl」でおなじみのギリアン・フリンの推薦文が。どことなく胸糞わる〜いミステリー小説のかほりが漂ってきますが…。それではあらすじを簡単に。

1950年代のメキシコ。ヨーロッパの富豪の息子Theodoreと貧しいカトリック教徒のRamónは、一人の女性を共に愛する「同志」でした。ところがある日、彼らの愛する女性Leliaが自宅で惨殺されているのが見つかり、2人の関係は一変します。互いの犯行を疑う2人でしたが、Ramónが突如として犯行を自白。逮捕されてからも不可解な発言を繰り返し、事件は混迷を極めてゆきます。Theodoreは疑心暗鬼に陥りつつもRamónを信じ、なんとか彼を救おうとしますが…。

奇妙な三角関係によって保たれていた友情のバランスが女性の死によって崩され、残された2人はこれまでの関係を改めて見つめ直す必要に迫られます。愛する女性の死に罪の意識を感じ、精神錯乱状態に陥るRamón。そんなRamónのことを「面倒くさい奴だな…」と思いつつも放っておけないTheodore。どうにかRamónに正気に戻って欲しくてTheodoreがあれこれと世話を焼くさまは、単なる友人の枠を完全に超えています。ブロマンスとかソウルメイトなどというキーワードに日頃から敏感に反応してしまう私は、Theodoreのちょっとした行為のひとつひとつにドキドキしてしまいました…。

パトリシア・ハイスミスは「人嫌い」としてよく知られていたそうです。またハイスミスは1995年に亡くなっていますが、自身がレズビアンであったことを公表したのは亡くなる数年前のことでした。1958年に発表されたこの作品におけるTheodoreとRamónの間柄には、人間関係を築く上での著者自身の理想や憧れがひそかに反映されているのかな…などと思いながら読みました。

ギリアン・フリンが推してる作品だけあって、心理描写多めのテキストは決してサクサク読めるものではありません。私が最初に心配したような胸糞悪さはそれほど感じませんでしたが(ホッ)、殺しの犯人が最後までわからないので、読んでいる最中はストーリーがどの方向に向かっているのかまったくつかめず、不安になったことは確かです。ストーリーの根底に流れる「人をどれだけ愛することができるか」というテーマは何気に重く、そして少々まどろっこしいので、読む人を選ぶ作品だとは思います。

けれども、60年以上前に書かれた作品とは思えないような、今の社会に通じる印象的なシーンがいくつも出てくるので、頑張って読む価値はあります。女性の地位の低さを嘆くような言葉や「人を愛するのに身分や育ちや宗教の違いは関係ない(※ブログ主による超訳です)」というような言葉が胸に刺さります。時代は変わっても、人というのはさほど変わりはないのだと思い知らされました。

この本から私が受け取ったメッセージがこちら。「小難しいことは考えず、愛したい人を愛し、生きたいように生きればいい。人を愛することなんて、生きる上でのゲームにすぎないのだから」これは、死んでしまったLeliaがTheodoreの夢の中に出てきて言うセリフに、自分なりの解釈を加えたものです。リアルの生活では、人生に迷ったときに愛する人が夢の中に都合よく出てきたり、幽霊になって出てきて自分を助けてくれたりはしません。でも、本の中ではそれが可能。スマホの画面に垂れ流される情報に身を任せる時間を少し減らして、こういう読みごたえのある作品から生き方についてじっくり学ぶのも、なかなか良いものです。

とりとめもなく色々と書いてしまいましたが、私が本当に言いたいことはただひとつ。Theodoreが飼っているネコがとっても可愛いので、ネコ好きな人はぜひ読んでみてくださいね。




ハイスミス作品を語るには、やはり評伝も読まないと…と今回強く思いました。
scribdに電子書籍版があったので、時間があるときに少しずつ読もう…。


*** いつもお読みいただきありがとうございます ***

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by book-of-dreams | 2019-11-17 09:53 | ミステリー | Comments(0)

趣味で洋書を読んでいます。表紙に一目惚れして衝動買いした洋書のレビュー、本に対する偏愛、英語の勉強などについて綴ります。


by Hiroko