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70年代カルチャーをリアルに描き出す「読む音楽ドキュメンタリー」 Daisy Jones & The Six (Taylor Jenkins Reid)

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今回ご紹介するのは、1970年代に全米の音楽ファンを虜にした伝説のロックバンド「デイジー・ジョーンズ&ザ・シックス」の回想録です。バンドの人間関係や、1978年発売の大ヒットアルバム「Aurora」の制作秘話、そして翌年の全米ツアーのさなか突如バンドを解散するに至った彼らの音楽活動の軌跡が、バンドメンバーや関係者の証言によって語られます。30年以上にわたり謎に包まれたままだったバンド解散の真相が、今はじめて明らかになるのです…。

…ここまで読んで「デイジー・ジョーンズ&ザ・シックスって誰?」と思った方も少なくないでしょう。それもそのはず、彼らは架空のバンドで、この本はフィクションなのです。人気絶頂期のフリートウッド・マックを思わせるこのバンドが魂を削りながら音楽の高みに上り詰めてゆく姿を通して、カウンターカルチャーの影響が色濃く残る70年代の音楽シーンが鮮やかに描き出されます。

物語は初めから終わりまで、インタビュー形式で展開されます。ミュージシャンおよび彼らを支える立場の人々が語る言葉はとてもリアルで、彼らの自負や重圧、葛藤などが浮き彫りになってきます。その光景がまるで音楽ドキュメンタリーを見ているかのように映像として目に浮かび、フィクションであることを何度も忘れそうになりました。ライブの場面などでは「奇跡のようなこの瞬間に私も立ち合いたかった…!」と、真剣に悔しい気持ちにさせられたほど。文字だけでは聴こえてこないはずの彼らの音楽に、すっかり魅せられてしまいました。

70年代という設定が、この物語をより力強いものにしていると思います。ベトナム戦争などで疲弊したアメリカで、若者がドラッグなどの刹那的な快楽に心のよりどころを求めていた時代。音楽は今よりもはるかに力を持っていたのでしょう。既存の文化に対抗していた当時の人々にとって、音楽とは、人と人とが生身の感情をさらけ出してお互いをわかり合うための貴重な手段だったのかもしれません。今の世の中、そんな70年代の生の感覚というか、ざらりとした肌触りみたいなものを必要としている人が、私を含めて少なからずいるのではないでしょうか。


ちなみに私、フリートウッド・マックのアルバム「Rumors(噂)」が大好きなのです。曲の素晴らしさは言うまでもないですが、このアルバムの魅力は「バンド内の人間関係は崩壊寸前だった」という裏話があってこそ。この本を読んだあとでフリートウッド・マックの映像を見ると、今まで以上にグッときますね。スティーヴィー・ニックスが瞳を潤ませ、歌の合間にリンジー・バッキンガムの顔を何度も見つめるその姿に、胸がキュンとします…。




オーディオブックも素晴らしいのでぜひ聴いてみてください(scribdにもあります)。『フラッシュダンス』のジェニファー・ビールス、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の看守メンデス(通称「エロひげ」)役で知られるパブロ・シュレイバーなど、豪華な出演陣で聴きごたえたっぷりです。


*** いつもお読みいただきありがとうございます ***

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by book-of-dreams | 2019-10-11 07:55 | 歴史小説 | Comments(0)

趣味で洋書を読んでいます。表紙に一目惚れして衝動買いした洋書のレビュー、本に対する偏愛、英語の勉強などについて綴ります。


by Hiroko