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今日の自分が、見知らぬ誰かの人生を彩るかもしれない… The Sun Is Also A Star (Nicola Yoon)_e0414617_20100023.jpeg

今回は、本の感想を語る前に、私が本格的に洋書を読むきっかけとなったある男性との出会いについてお話ししたいと思います。正確には「出会った」のではなく、ただ「見かけた」だけの人です。それまでも英語学習の一環として洋書を読んではいましたが、その出来事を境に、私の洋書の読み方がガラリと変わったのです。

どこかのタイミングでこのブログに書きたいとずっと思っていたことなのですが、 Nicola YoonのYA小説「The Sun Is Also A Star」を読んだことで、ようやくその機会がやってきました。大した話ではないのですが、ご興味のある方は、しばしお付き合いいただければ幸いです…。


数年前にニューヨークを訪れた時のことです。帰宅ラッシュで混雑した地下鉄の車内で、その男性はペーパーバックを読んでいました。顔立ちから判断して、おそらく中南米系の移民でしょうか。彼の着ているチェックのシャツとチノパンはくたびれていて、泥まみれのスニーカーのつま先には穴が開いていました。その佇まいからは、ニューヨークで暮らす苦労がうかがえます。

しかし、脇目もふらずに本を読みふける彼は、私の目にはとても幸せそうに見えました。本に没頭している間だけは、日々の煩わしいことは全て忘れて空想の世界にひたることができる…そんな喜びで満たされているかような彼の姿に、私は憧れにも似た思いを抱きました。私もこの人みたいに生きよう…そんな思いにかられたのです。

それ以来、英語学習の延長として洋書を読むのをやめ、自分の楽しみのための読書に切り替えました。英語力のレベルは気にせず、そのときどきで自分が読みたいと思った本を気の赴くままに読むことにしたのです。勉強のためにという気負いや焦りを捨てたことで、洋書を読むことが純粋な喜びに変わりました。

本の買いすぎでお財布の中は常に空っぽですが、洋書を読んでいる時は、常に豊かな気持ちで満たされています(どうしても読めない本に対してキーッとなることもありますが。笑)。電車の中で本を開く時間は特に幸せで、ときどき自分が目に見えないバリアに守られているのを感じます。そんな時、ニューヨークで出会ったあの男性の記憶がいつも心に蘇ります。

あの男性は、極東で暮らす見知らぬ女に自分が影響を与えたとは夢にも思っていないでしょう。けれども私は、おそらく彼のことをこの先もずっと忘れないと思います。今でもたまに、彼のニューヨークでの暮らしぶりをときどき想像したりしています。

彼は今日も、地下鉄の中で本を開いているだろうか。

奥さんや子供はいるのだろうか。

仕事は何をしているのだろうか。

職場で理不尽な思いをしていないだろうか。

定期的に移民局に行かされて、犯罪歴についてしつこく聞かれたりしているのだろうか。

今でも彼はニューヨークに住んでいるのだろうか…。


そんなことをひっそりと…ね。



「The Sun Is Also A Star」は、移民の街ニューヨークが舞台の切ない恋物語です。母国への強制送還を明日に控えたジャマイカ移民の女性と、詩人になる夢をくすぶらせながら親の意向で名門大学への進学を目指す韓国系アメリカ人のダニエル。偶然に導かれて出会った2人の運命的な1日が描かれています。

2人が運命の赤い糸を懸命にたぐり寄せようとする裏で、彼らを取り巻くさまざまな人たちの思いが交錯します。2人との関係が深い人々(それぞれの家族)もいれば、その場限りの関係の人もいます(地下鉄の車掌、移民局の職員など)。夜空に無数の星がまたたくように、彼らにもそれぞれの人間模様があり、何らかの形で互いに影響を与え合いながら、世界を形作っているのです。

運命の出会いというものは、あえて探しに行かなくても、自分の周りのあちこちに転がっているものなのだ…そう信じたくなる物語です。小説になるようなドラマチックな出来事はそう起こらないとしても、今日を生きる自分の存在が、通りすがりの誰かに何らかの影響を及ぼすかもしれないのです。ニューヨークの地下鉄で本を読んでいた男性が、私をさらなる本まみれの人生に導いてくれたように。

あの時、私が地下鉄に乗るのを1本遅らせていたら、あの男性に出会うことはなかったでしょう。あの人に出会わなければ、洋書に散財することなく今頃は大金持ちになっていたかもしれませんが…。まあねぇ…それは、また別の話ということで。






※映画版です。主人公の2人とNYの街並みが魅力的。でも私は原作の方が好みかな…。



Nicola Yoonのもう1冊の著書「Everything Everything」は、レビューはしていませんがこちらの記事で少しだけ触れています。



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# by book-of-dreams | 2020-01-19 17:34 | YA(ヤングアダルト) | Comments(0)
「ドロシーの物語」が時代を超えて愛される理由 Finding  Dorothy (Elizabeth Letts)_e0414617_20420034.jpeg


「オズの魔法使い」の作者ライマン・フランク・ボームとその妻が共に歩んだ人生の道のりを軸に、オズの物語の誕生秘話、そして大ヒット映画の舞台裏を綴ったヒストリカル・フィクションです。

日記や手紙などの膨大な資料や学術研究などを基に、発展途上のアメリカで夢を追い続けた人々の姿を描いた大河小説。新年の読書初めにふさわしい感動作でした。


[あらすじ]
1938年のハリウッド。L・フランク・ボームの妻モードは、新作映画「オズの魔法使い」の撮影現場を訪れます。原作者である夫はすでに他界。夫が作品に込めた意図がねじ曲げられてしまうことを危惧するモードは、映画スタジオの重鎮との直談判を試みますが、まともに取り合ってもらえません。映画製作にあたり、たとえ原作者の遺族であっても口を出すことは許されない状況でした。

そんな中でモードは、主人公の少女ドロシーを演じるジュディ・ガーランドが撮影中に不当な扱いを受けているのを目撃します。ジュディの配役に疑問を抱いていたモードも、様々な重圧のもとでドロシーを演じるジュディを何とかして救いたいと思うようになります。収益のためなら手段を選ばない映画スタジオからオズの物語を守ることは、
モードと夫フランクの夢の象徴である「ドロシー」を守ることでもあったのです…。


「オズの魔法使い」が時代を超えて多くの人の心をとらえる理由が、この小説を読んであらためてわかりました。L・フランク・ボームがオズの物語で描いたのは、自身の人生そのもの。妻のモードと共に乗り越えた苦難の日々を愉快な冒険物語として紡ぎあげ、目の前にある困難から逃げずに前進し続けることの大切さを我々に教えてくれていたのですね。

努力の結果として手に入れたものが当初の願いとは違っていたとしても、それが次なる道への思いがけない扉を開いてくれる…。フランクとモードが歩んだ「黄色いレンガの道」には、そんな人生のエッセンスがたくさん詰まっていました。

この小説で描かれるモードとジュディ・ガーランドの触れ合いについては、どこまでが実際の話なのかは想像するしかありませんが、読者としてはこの逸話が本当であってほしいなと思います。この映画でスターとなったジュディ・ガーランドがその後にたどった運命を思うと本当に悲しいのですが(彼女の悲劇性もまた「オズ」が伝説となった理由の一つですよね…。残念なことではありますが)、せめて、この小説の中でジュディがモードと過ごした束の間の楽しいひとときが真実であったことを願わずにはいられません。

なお、巷に流れるジュディ・ガーランドのスキャンダラスな過去の一部については、悪意のある伝記作家やジュディを良く思わなかった人物による捏造の可能性が指摘され、現在ではその信憑性が疑問視されています。この小説でも、ジュディを取り巻くハリウッドの闇に触れられてはいるものの、観客に夢と感動を与えてくれたジュディへの敬意に満ちた描写がなされています。


今回の読書もたくさんの気づきと涙で満足された、非常に充実したものになりました。自分のヒストリカル・フィクション愛にさらに磨きがかかった気がします…。

以前このブログでご紹介したフィオナ・デイヴィスの「The Address」(レビューはこちら>>)の舞台となっていたのは、1800年代末期のニューヨーク。特権階級の金ピカな暮らしぶりが印象的に描かれていました。一方、「Finding Dorothy」で描かれているのは、同じ時代でもアメリカ中西部で貧しい生活を強いられていた労働者階級の人々。ひとたび災害が起きれば街が丸ごと消えてしまうような状況で、人々は安住の地を求めてさまよい続けていたのです。この2つの物語を比較するだけでも、「アメリカ」を一括りで語ることはできないことが良くわかるし、何事も大きな主語で語ってはならないということをあらためて認識した次第。

世界史の教科書からは何一つ学べなかった私も、丁寧に練られた海外小説を媒体にすれば、当時の人々の暮らしぶりに思いを馳せることができます。フィクションの力は本当に偉大。この楽しみをもう少し早くに味わえていれば私の人生も大きく違ったのかもしれませんが、今のままでも十分幸せだからまあいいか。エメラルドの都に向かうドロシーのごとく、自分を待ち受ける運命をすべて受け入れ、流れのままに生きていこう:->



※Kindle版はちょっと嬉しい500円台。
オーディオブックもおすすめ。厳しい時代を生きた女性たちの意志の強さが手に取るように伝わってきます。


※映画版がプライム特典で観られます。ただし画質が悪いので、気になる方はレンタル版で。


「オズの魔法使い」の原作本は、映画版よりもさらに優しさがあふれています。声に出して何度も読みたい英語。






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# by book-of-dreams | 2020-01-11 14:20 | 歴史小説 | Comments(4)

2020年の抱負。

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今年、私に読まれるのを待っている本たち(のごく一部)。


Happy New Year 2020!

あけましておめでとうございます。昨年はこのブログを通じてさまざまな出会い、そして発見がありました。お世話になった皆様、本当にありがとうございました。今年も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。


さて、新年のゆる〜い誓いですが…。


(1) 洋書レビューを月3本書く。

1年で36本(=読了本の数)。数にすると決して多くはないですね…。汗汗汗

ただでさえ読むのが遅いうえに、このブログを立ち上げてからは「レビューを書き上げるまでが読書」ということになっているので(家に帰るまでが遠足、っていうのと同じ)、1冊の本を読み終えるのにかなり時間がかかってしまうのです。自分のライフスタイルを考えても、月に3冊というのは今の私にとっては結構ハードな数字です。

しかしそこは目標を少しだけ高く持ち、1冊でも多くの本を読んでいけたらと思います。36冊と言わず、できれば歳の数だけ読んでレビューしたいな(ちなみに年女ですが、36歳ではありません…)。


(2) リスニング力を鍛え、それを支える集中力を養う。

ここ数年、仕事の影響もあるんですが、視力が年々ものすごい勢いで落ちていまして…。私が紙本メインで読書をしている切実な理由は、Kindle Paperwhiteですら目が疲れて使いものにならなくなるからです(どんなに文字が小さくても、目に優しいのはダンゼン紙の本ですね…あくまでも個人の感想ですが)。

これからもずっと読書を楽しむためにも、できるだけ眼を大事にしてあげたい。そこで今年こそはオーディオブックをフルに楽しめるよう、英語のリスニング力を強化したいと思います。あとは、集中力。今は、聴き始めてほんの10分ほどでナレーションが右から左に流れていくか、心地よい眠りの世界に落ちていくか、そのどちらかなので…。


という感じで、今年も洋書とともに歩んでいきます。これを読んでくださっている皆さんも、今年も素敵な本にたくさん出会えますように!



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# by book-of-dreams | 2020-01-01 10:36 | ご挨拶・お知らせ | Comments(6)

よいお年を。

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今年を締めくくる本は「The Wonderful Wizard of OZ(オズの魔法使い)」。来年の読書初めの1冊はすでに決まっており、その予習のためにこれを読んでいます。映画は何度も観ていますが、原作を読むのはこれが初めて。文字で読むと、この愉快な物語に内包された「人の温もり」や「優しさ」がさらに深みを帯びて胸に迫ってくる気がします。




さて、いよいよ、2019年も終わりですね。

5月にブログ開設して以来、たくさんの方に遊びに来ていただきました。ご縁あってこのブログにお越しくださった皆さんに感謝します。ありがとうございました!

コメント欄やTwitterを通じて寄せられるメッセージの一つ一つが励みになりました。洋書好き・本好き・英語好きの皆さんとの交流は本当に楽しく、そして大きな刺激になっています。

来年も引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、よいお年をお迎えください。



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# by book-of-dreams | 2019-12-31 09:34 | ご挨拶・お知らせ | Comments(0)
2019年に読んだ本ベスト5_e0414617_09323288.jpeg

2019年も残りあとわずか。今年私が読んだ洋書はどれも素晴らしいものでした(量をこなしていないということもありますが、どうしても肌に合わずにDNFとなったのは1冊のみ)。

ベスト5を選ぶのは難しいのですが、あえて挙げるとしたら…上の写真の5冊となりました。

レビューはこちら。順不同です>>


「Factfulness (Hans Rosling)」はこのブログを開設する前に読んだのでレビューはしていませんが、邦訳版と共に大ヒットしているので、読まれた方も多いことでしょう。私が社会に対してなんとなく抱き続けていた思いを言語化してくれた、会心の一冊でした。(Amazon.co.jp商品ページへ>>


ベスト5には入れられなかったけれど、強く印象に残った本は以下の3冊。

↑上の2冊は、新たな時代の到来を実感させてくれました。

↑こちらは、今年いちばん泣いた作品。


こうやって自分の気に入った本を改めて並べてみると、読書傾向にまとまりがあるような、ないような…うん、やっぱりないですね。笑。そのときどきで興味のそそられた本を、気の赴くままに読んでいるだけなのがよくわかります。そんな中で、古典文学に挑戦して苦手意識を(ちょっとだけ)克服できたこと、また今まではノーマークだったヒストリカル・フィクションの楽しみに目覚めたことなどは、今年の大きな収穫でした。



5月にこのブログを開設した理由として、いちばん最初の記事でこんなこと言ってます。本を所有する喜びはこのブログで十分に表現できたと自負していますが(笑)、積み重なるばかりの未読本を消化したいというのも、ブログを始めた大きな目的の一つでした。ところが、ベスト5に挙げた本のうち「Rebecca」以外は全部今年に入ってから買ったものだし、最初の記事で載せた写真に写っている本で、両端の2冊は結局読まずじまい。積ん読本は減るどころか増える一方だったなあ。今の手持ちの本の中から、来年のベストに食い込む本がたくさん出てくればいいなと思っています…。まったく買わないというのは間違いなく無理だと思うけれど。




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# by book-of-dreams | 2019-12-30 13:30 | おすすめの洋書まとめ | Comments(0)

趣味で洋書を読んでいます。表紙に一目惚れして衝動買いした洋書のレビュー、本に対する偏愛、英語の勉強などについて綴ります。


by Hiroko